医療従事者向け | 脆弱X症候群
概要
知的障害を示す代表的な遺伝性疾患である。X染色体長腕末端部に位置するFMR1遺伝子内の3塩基(CGG)繰り返し配列が、代を経るごとに延長するために発症するトリプレットリピート病の一つである。
症状
- 知的障害(男性では重度、女性では幅があるが、正常からごく軽度のことが多い)は必須症状。
- 顔貌の特徴(大耳介、細長い顔)、巨大睾丸、行動異常(自閉的症状、多動、注意欠如)、学習障害、関節の過伸展、扁平足などは参考症状。
原因
Xq27.3に存在するFMR1遺伝子の5’非翻訳領域にあるCGG繰り返し配列が201リピート以上に延長し、この部位にメチル化が起こることによりFMR1遺伝子の転写が消失、最終的にFMRP蛋白が欠失することにより発症する。
検査所見
遺伝学的検査以外に特徴的な検査所見はない。
- FMR1遺伝子の変異(CGG繰り返し配列の延長(201回以上))を証明することが確定診断となる。
- 染色体検査でのXq27.3の脆弱部位の検出は参考とする(全ての患者で陽性にはならない)。
遺伝学的検査
2016年度から脆弱X症候群の遺伝学的検査(D006-4)が保険適用となり、検査会社での遺伝学的検査が可能となっている。
ただし、本検査はD006-4 遺伝学的検査(1)エ に含まれるため、遺伝学的検査の実施(保険償還)に際して地方厚生局へ届出(様式23)が必要となる。
詳細については各機関の医事課等へご確認下さい。
(参考資料)
日本衛生検査所協会 D006-4 エ 遺伝学的検査の受託に関して
http://www.jrcla.or.jp/info/info/281101.pdf
全国保険医団体連合会
D006-4 遺伝学的検査 様式23
https://hodanren.doc-net.or.jp/iryoukankei/16kaitei/tdkd/y223.pdf
(2016年度診療報酬改訂特集
http://hodanren.doc-net.or.jp/iryoukankei/16kaitei/index.htmlより)
検査方法としてPCR法(図1)、染色体検査(図2)、サザンブロット法、PCR-サザンブロット法(図3)などがある。
染色体検査では、患者ではX染色体長腕末端部のギャップと切断を認めるが(赤矢印の部分)、検査に慣れていないと見落とす可能性もある。また、患者であっても、検査した細胞のごく一部にしか異常を認めない場合もしばしばある。
遺伝子の変化があっても染色体検査はまったく正常の例もある。これは、成人の場合に比較的多くなる傾向がある。そのために、遺伝子検査(PCR法、サザンブロット法)の方が確実な診断ができる。
(図1)PCR法 | |
(図2)染色体検査 | (図3)PCR-サザンブロット法 |
患者登録(レジストリ)について
「脆弱X症候群ならびに脆弱X症候群関連疾患のレジストリ」は、臨床試験/治験を目的として、患者さんと将来的に製薬関連企業・研究者との橋渡しをする登録システムです。
医学の進歩により、治療法がなかった疾患に対する新しい治療法が開発されてきています。 脆弱X症候群や脆弱X症候群関連疾患も同様で、海外では治療研究が大きく進捗しています。そのため、国内でも原因を標的とする治療法を含めた新たな治療法が臨床応用目前に迫っています。これが標準的な治療となるためには、研究の最終段階として患者さんに対して「臨床試験/治験」を行い有効性と安全性を確かめることが必要です。「臨床試験/治験」を円滑に進めるためには、あらかじめ対象となる患者さまを登録することがとても重要です。
対象:FMR1遺伝子のCGG繰り返し回数が延長している方
登録方法:詳細については個別にご案内いたします。以下がおおまかな流れです。
1. 倫理承認を受ける
・倫理委員会がある場合:患者さん本人あるいは代諾が可能な家族から患者登録の同意を得た上で、各施設で倫理承認を受けて下さい。
・倫理委員会がない場合:研究分担施設として、鳥取大学で倫理承認を受けます。
2. 患者登録を行う
・専用の患者登録用紙をお送りします。必要事項を記載し、郵送にて返送して頂きます。